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Physis
自宅近くに緑が綺麗な小山がある。その小山は産業廃棄物でできていた。
不法に投棄された土砂などが長い年月をかけて積み重なり、今では標高40m ほどにもなる小山の斜面には、
鳥や風が運んできた種子が芽吹いており、 一見すると違法残土の山とは思えないほど豊かな様相を見せている。
この小山の近くを通るたび、その力強い姿に驚かされていた。
誰の管理も受けず、汚染された土壌から芽吹くその姿は命の循環を感じさせ た。
自然が持つ生成の力、その目には見えない力を少しでも表現しようと思 い、ピンホールカメラで撮影を始めた。
しかし、撮影開始から少し経った 頃、小山一帯は再開発地域に指定され、終末処理場の建設が始まった。
日を追うごとに工事は進み、崩されて更地となっていく小山。
かつての緑豊かな自然の姿をもう一度見るにはどうしたらいいのだろうか?
ある日ふと思い立ち、更地となった地面の上にプロジェクターを使い、 緑豊かだった頃の小山の写真を投影した。
風に揺れる草花や空に向かって伸 びる木々。暗闇の中、淡く浮かび上がるその姿は過去の光景であると同時に、
また長い年月を経て生成される未来の姿のようにも感じた。
タイトルの「Physis(ピュシス)」とは、natureの語源となった古代ギリシャ 語であり、「万物がそこから生成し、
そこへと消滅する万物の根源」を意味 する。目には見えなくともまた生成される生命の力「Physis」を表現しようと試みた。
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